琢磨さん、こんにちは。
開幕戦5位、おめでとうございました!!
途中順位を落としながらも力強くレースされていて、とても頼もしかったです!
昨シーズンよりチームの皆さんも結束力が高まっているのが伝わってきました。
With you Japanの活動もとても嬉しかったです!
琢磨さんのがんばりに励まされる人は本当に多いと思いますので、これからも絶対に走り続けて下さい。
私も自分にできることから(節電や募金などだけですけど…)始めていますが、琢磨さんの活動も応援します。
ところで、今年からインディカーのルールが少し変わったそうですが、
開幕戦を走られてみて、琢磨さんはどう感じられたのでょしょうか?
どこが新しくて、レースにどんな影響があるのか、教えていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!今後のレースも期待しています!!
こぐまより
こぐまさん、Q for Taku!へのご応募、ありがとうございました。
そうなんです、インディカー・シリーズでは今年からレギュレーションの一部が変更になりました。このうち、レースの流れに大きな影響を与えそうなのが、予選中のタイアに関するものと、再スタートに関するものの2点です。それぞれ、順にご説明しますね。
まず予選でのタイアの使い方に関して。昨年まで、ロードコースおよび市街地コースの予選では通称“レッドタイア”を2セット使えました。レッドタイアとは、基本となる“ブラックタイア”より柔らかめのコンパウンドを使用し、グリップを向上させたタイアで、サイドウォールが赤く塗られていることからその名が付きました。ただし、コンパウンドが柔らかいのでブラックタイアより寿命が短いという短所があります。F1でいえば、レッドタイア=オプション、ブラックタイア=プライムのようなものですね。
ここに、今年から「予選の1セグメント(=セッション)ごとに使えるタイアは1セットのみ」というルールが加わりました。ロードコースおよび市街地コースの予選は3つのセグメントに分けて行なわれますが、それぞれのセグメントで使えるタイアが1セットのみに制限されたのです。
このため、昨年までであれば、ひとつのセグメント中に「まずブラックタイアでクルマの感触を確認してからレッドタイアでアタックしよう」とか、「Q2に駒を進めたら、まずは中古のレッドタイアでアタックし、その後新品のレッドタイアで更なるタイムアップを図ろう!」とか、あるいは「ここは勝負どころなので、ひとつのセグメントでレッドタイアを2セットとも投入しよう」などの作戦が立てられましたが、今年からはこれらがすべてできなくなり、ブラックタイアで走り始めたらブラックタイアだけ、レッドタイアで走り始めたらレッドタイアだけしか使えなくなりました。もちろん、中古のブラックから新品のブラックへ交換することや新品のレッドを2セット立て続けに投入することも禁止です。
いっぽうで、タイアが最高の性能を発揮してくれる“ニュータイア効果”は1~2ラップしか持続しないので、1セグメントで1セットのタイアしか使えなくなると、セグメントごとに、ぶっつけ本番でタイムアタックを行なうことになります。つまり、クルマの状態が確認できないままアタックするので、ギャンブル性というかゲーム性は必然的に高くなります。ギャンブル性が高くなれば予選結果は意外なものになり、決勝レースも波乱含みになる、というのがIRL側の思惑です。
彼らの狙いは半分的中し、半分外れました。なぜなら、ぶっつけ本番でアタックするからこそ、長い経験と充実したデータを持つトップチームが有利になるという傾向があるからです。
とはいえ、インディカー・シリーズでは全車のタイム差がとても小さいため、ちょっと油断しただけで大きく順位が変動する恐れがあります。そこで、普通に予選を戦えばセグメント1で敗退するかもしれないチームは、大切なレッドタイアをセグメント1で投入し、少しでも上の順位を確保しようとします。すると、玉突き式にこの影響がトップチームにもおよび、トップチームもセグメント1からレッドタイアを使って全力でタイムを出しにくることになります。つまり、セグメント1から真剣勝負の繰り返しとなり、こうしたなかで、わずかなミスをしたトップチームのドライバーが下位グリッドに沈み込み、代わりに意外なダークホースが上位グリッドを得るという可能性が高まったのです。
ただし、どのドライバーも一発勝負に賭けているので、少しでもよい路面コンディションを期待してセグメントの終わりのほうでタイムアタックを行なう傾向があり、このため、セグメントの前半はあまり走行が見られないのは、観客の皆さんにとって物足りない部分かもしれません。けれども、ギリギリまでタイミングを遅らせたらイエローフラッグが出てまともにアタックできなくなったというケースも考えられるので、全般的には、新しい予選方式はエキサイティングな展開になりやすいと思います。
続いて、再スタートについて。
インディカー・シリーズでは、レース中にアクシデントなどが起きるとフルコーションとなり、セーフティーカーの先導により速度が制限され、またコース上での追い抜きが禁止となります。また、コース上の清掃作業などが終わってレースが再開されるときには、全ドライバーが隊列を整えなければならないことになっています。この再スタート時の隊列は、昨年まで1列縦隊のシングルファイル形態でしたが、今年からレースのスタート時と同じダブルファイル、つまり2列縦隊で整列することになりました。2列縦隊で並んだほうが全体がコンパクトにまとまり、それだけ再スタート後のバトルがエキサイティングになると期待されたからです。ハコ型アメリカンレーシングの代表格であるNASCARシリーズで適用されているルールですが、バンパーのついているNASCARに比べて僕らはタイアが剥き出しのフォーミュラーカー。実際、開幕戦でも再スタート時には随所で接戦が見られましたが、あまりに接近しすぎて危険な状態といえなくもなく、この点はIRL側とドライバー側で引き続き議論が行なわれています。基本的には、全ドライバーがバトルする相手をリスペクとし、彼らにも走行ラインをしっかり残すというマナーが実践されれば、事故はある程度回避されることでしょう。
さて、4回のリスタートがあった今回のレースで、僕はなんと4回ともアウト側に並び、そのたびに順位を落としたことはマーカス・コラムでもお伝えしたとおりです。アウト側は路面が汚れていて滑りやすく、スピードが伸び悩むうえに、イン側には次から次へのクルマが押し寄せて割り込むことができなかったのです。
ところで、なぜ僕はアウト側に並ぶことになったのか? それは、レースが一時中断されたその時点での僕のポジションが6位、8位、10位、8位と全部“偶数順位”だったためです。ちなみに、アウト側が有利か、それともイン側が有利かはコースによって異なります。そこで、フルコーションとなった時点でトップに立っていたドライバーは、イン側につくか、アウト側につくかを選ぶことができるルールになっています。今回の例でいえば、イン側が有利だったからトップのドライバーは必ずイン側に並んだ。そうすると、2番手はアウト側、そして3番手がイン側で4番手はアウト側……と、偶数順位のドライバーは必ず不利なポジションからスタートしなければならなくなります。そして運の悪いことに、僕はずっとアウト側だったというわけです。
まあ、これは本当に運が悪かっただけですし、皆同じ条件なので文句は言えないですけどね(苦笑)ただし、イン側に並んだドライバーには相当有利なルールだし、隊列が整った直後にピットインするドライバーがいれば、その列にいた後方のクルマは全車そのまま前に詰めることになるので、自動的に順位が二つ上がるという、ちょっと不公平な気がしないでもないです… 何かしらの対策なり改善ができるのであれば、それを期待したいですね。
というわけで、こぐまさん、レギュレーション変更のポイント、ご理解いただけましたか?
Q for Taku!では皆さんからの質問を受け付けていますので、お気軽に応募くださいね! お待ちしています。