迎えた決勝レース。今日の第1レースは残念ながら一樹は出走できない。
1回目の予選の時に、黄旗が出ていたのに気付かずに前車を追い越してしまった為、ペナルティで失格になってしまい、その予選のレースの第1レースは出走取り消しになってしまった。
残念やけど仕方が無い。これも彼にとっては1つの経験として次につながるはずである。
こんな事に負けずに頑張れ! 一樹!

そしてその第1レース。今日は昨日とはうってかわって、いいレース日よりとなった。
晴天の下でのレースは気持ちがいい。
昨日までのうっぷんをここで晴らしたいものや。

朝から出走への準備をしていよいよ時間は来た。マシンはゆっくりとピットを出て行く。
そしてそのままコースを一周してグリッドにつく。
グリッドは2列目の4番手。後ろからグリッドにストップしたマシンの間を縫う様にして、琢磨君は自分のグリッドに着く。自分達はグリッドでのいつものルーティンワークをこなして行く。
前には2台のマシンが見える。早くクリアな景色の指定席に戻らねば。

前回Silverstoneでのリミッタートラブルも解決した事やし、今回はばっちりスタートを決める事が出来るはずや。
自分達は琢磨君を信じて固く握手をしてコースから退去する。
緑旗が振られてマシンはゆっくりとフォーメーションへと向かって行く。コースを一周していよいよグリッドへ。
各車一斉にエキゾーストノイズが高まる。
レッドシグナルが点灯して、いよいよ5秒前。レッドシグナルが消えると同時にグリーンシグナルが。
各車一斉にスタート! 我が琢磨君はいつものように普通にロケットスタート! 1コーナー進入時で2番手に踊り出る。あとは前を行くマット・デイビスをいつ抜くかだけや。

しかし、ここSnettertonは極端に難しいサーキットである。スピード差がかなりあってもなかなか抜けない。
タイム的に見るとデイビスに抑えられてしまっている。
一度彼の前に出れば引き離すのは当然目に見えている。しかしなかなか抜けずにいると、幸運にもアクシデントによりセーフティーカーが入った。
しかし、このセーフティーカー、トップを捕らえることが出来ずに中段グループの中に入ってしまい、おかしな形でのセーフティーカーになってしまっている。
トップを捕まえる? トップがセーフティーカーを捜してやっと正規の隊列が整ったのは数ラップしてからだった。
まったくもう。
そしてそのままセーフティーカーが先導して行く。時間は刻々と過ぎて行く。
そしていよいよ再スタート。セーフティーカーがピットロードに向かい、マシンは先頭のデイビスがコントロールラインまでのペースカーとなる。
そして再スタート直前のシケインでは、追突したのではと思える程接近。琢磨君のノーズはデイビスのリアウイングの下まで潜り込ませた。
そしてそこから先頭の2台は一気に加速して行き、コントロールラインを通過したと同時に琢磨君はアウト側にマシンを振り、デイビスに襲い掛かる。
1コーナーに2台並んで入っていくのをサインガードウォールから体を乗り出して追いかける。
ん? ウォールから体を乗り出すってコース側に身を乗り出すっちゅー事やね。
おいおい、危ないって。後ろからまだまだマシンは走っているのやから、そんなにコース側に体を出したらマシンに轢かれるっちゅーねん。

そんな事はどうでもよい。(よく無いって)ついに琢磨君はトップに踊り出る。
やった。この瞬間をどれだけ待っていた事か。その差は見る見るうちに広がって行く。
あとは独走態勢を築く。このまま残り時間を支配する! と思ったその時。デイビスが先頭で戻ってくる。
琢磨君は? 何が起こった? ピットが殺気立つ。ピットロードに琢磨君のマシンがゆっくりと入ってくるのが見えた。マシンはゆるゆるとピットの前に。
スパで起ったギアトラブルと同じ事が起った。マシンはそのままリタイヤ。
目の前が真っ暗になった。信じられない。いや、信じたくない。夢であって欲しい。しかしこれは現実だ。
今、目の前で起った事実である。自分達はその事実を受け止めなければならない。
なんと言ってもまだ今日はあと1レース残っている。
終ってはいないのだ。そんな感傷に浸っている時ではない。しかし、しかしである。
同じ事は二度と繰り返さない。これが基本のはずである。あってはならないことである。
自分達は今まで何をやってきたのだ。勝てるレースを台無しにした。
自分は恥ずかしくて、悔しくて涙が出てきた。いや、涙さえ出てこない。呆然と何が起ったのか把握できるまでしばらく時間がかかった。何をやってるんや。最低や。
琢磨君の顔を、目を正面から見られない。目を、顔をそらしてしまう。

しかし、まだもう1レース残っている。気持ちを整理してしっかりと自分を保ち、第2レースに向けてマシンをチェックし直さなければならない。
ギアボックスだけでない。こんなにトラブルが出ている時には他に何が起こるか分からない。
ドライバーを危険な目にだけは合わせては行けない。トラブルの出た個所はもとより、こんな時はそれよりも安全性により重点を置きチェックする必要がある。
大丈夫や。ここで自分達が踏ん張らないとずるずるいってしまう。
ここで自分が食止める。なんとしてもこれで終りにする。マシンは安全にゴールまで導かせる。
つらいなどと自分で感傷に浸って自分を慰めている時では無い。
ドライバーの気持ちを考えてみい、自分達の100倍悔しい気持ちでいっぱいだ。
ドライバーにはなんの落ち度も無い。それなのに勝てるレースを失ったつらさ、それも同じトラブルで2回も。本当に申し訳なく思う。しかし次に向けマシンを安全に仕上げないと。
気持ちの整理はついた。とにかく安全にだけは確実に次のレースに向けてチェックする。
当然ギアボックスも最初からやり直しや! なんとしても。
次のレースが正念場だ。次のレースが極端な話今年一年を左右するかもしれない。
踏ん張り所だ。自分に言い聞かせて気持ちを落ち着かせる。
やるしか無い。自分がやらなくて誰がやる! 自分に出来ない事は誰にもできひんのや。
自分しか出来ない。自分が頑張る。ここで踏ん張ってやる。もうあとには引けない。
攻撃こそ最大の防御とも言うし。ここで攻めの気持ちが出来ないと駄目になる。
次のレースに向けて気を引き締め直したる! やったるでー! もう大丈夫や! ドライバーはこの100倍悔しくてやりきれない気持ちを持っている。ここで自分達が弱気になってはいけない。こんな時こそ強くならねば。

第1レース決勝
POS NO DRIVER NAT TEAM CAR TIME
1 14 Matt Davies GBR Team Avanti Dallara F301 Opel Spiess 20:01.785
2 01 Derek Hayes GBR Manor Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 20:02.052
3 08 Gianmaria Bruni ITA Fortec Renault Dallara F301 Renault Sodemo 20:03.497
4 10 Ryan Dalziel GBR RC Motorsport Dallara F301 Opel Spiess 20:04.830
5 09 Nicolas Kiesa DEN RC Motorsport Dallara F301 Opel Spiess 20:05.495
6 04 James Courtney AUS Jaguar Racing F3 Dallara F301 Mugen-Honda 20:06.873
7 03 Andre Lotterer GER Jaguar Racing F3 Dallara F301 Mugen-Honda 20:10.005
8 05 Anthony Davidson GBR Carlin Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 20:11.311
9 15 Milos Pavlovic YUG Team Avanti Dallara F301 Opel Spiess 20:13.430
10 21 Mark Taylor GBR Manor Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 20:13.981
11 18 Andy Priaulx GBR Alan Docking Racing Dallara F301 Mugen-Honda 20:14.629
12 02 Jeffrey Jones USA Manor Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 20:14.965
13 17 Paul Edwards USA Alan Docking Racing Dallara F301 Mugen-Honda 20:15.639
14 27 Jamie Spence GBR Duma Racing Ltd Dallara F301 Mugen-Honda 20:19.600
15 07 Alex Gurney ITA Fortec Renault Dallara F301 Renault Sodemo 20:24.023
Retirement 06 Takuma Sato JPN Carlin Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda -
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