我々は時間が許す限りタイヤを回転させながらのゴミ取りとポールポジションのグリッドの周辺のトラック上のゴミ取りを行いながら時間を待った。
5分前の表示が出た所で作業を終わらせ、自分とJohn以外の者はコースから退去して行った。1分前の表示と共にJohnの合図でエンジンに火を入れた。エンジンがスタートしたのを確認してジャンプバッテリーをカプラから抜き取り、琢磨君とガッチリ握手を交わして目でお互い会話して自分はコースを去って行った。コンクリートウォールの鉄の扉が閉められてコース上はマシンとドライバーだけの戦いの場になった。グリーンフラッグが振られてマシンはフォーメーションへと旅立っていく。マシンはウェービングを繰り返しながらタイヤをこの一周で暖めながらグリッドへと着いて行く。
先頭の琢磨君が当然1番最初にグリッドに到着してギアをニュートラルにして、後続がグリッドに整列して最後尾が並んで隊列が整ったのを最後尾にいるオフィシャルが確認すると同時にグリーンフラッグを振り、タワーのマーシャルに合図をして5秒前のボードが提示された。
それを合図に各マシンは一斉にギアを1速に叩き込んでエンジン回転をレブリミッターで制御して、レッドシグナル点灯と共にそのエキゾーストノートは一段と激しさを増した。そしてそれはシグナルがグリーンに変わると同時に一気に解き放たれた。マシンは弓から解き放たれた矢のように1コーナーめがけて弾けるように加速していく。先頭で琢磨君がすでにその差を大きく広げながら1コーナーを綺麗にクリアしていくのが確認された。自分はそれを見届けてからバッテリーを抱えてサインガードまで一気に走っていった。サインボードの一番上にP-1の文字を入れ、2段目に残り周回数をL 14と入れた。一番下は2番手とのタイム差を入れる為、初めは何も入れていない。ちょっと先取りして+のボードだけは入れたけれども。そしてオープニングラップをすでにブッチギリで2位以下を大きく引き離して帰ってきた。その差はすでに1秒4開いている。
今年の琢磨君の強さの秘密はここにある。スタートしてすぐのタイヤが温まっていない状態でプレッシャーも低く車高が低く滑りやすいこの時に攻めてタイムを出す事が出来る。普通はこの時には攻める事が出来ずにタイヤが温まるまでペースを落とさざるをえない。しかしこの状態でタイムを出せるのは強さと速さの証明である。
自分はストップウォッチで琢磨君と2位との差を計り、サインボードにP-1,L 13,+1・47と入れ直して次のLAPを待つ。その差はますます広がっていく。そしてこのレースは琢磨君の後ろの2位争いが荒れに荒れた。2位を走るマシンが次から次に変わっていく。しかしそんな後ろの事など意に介さずトップを行く琢磨君はファーステストラップを叩き出しながらその差を周回ごとに広げていく。見た目は楽勝モードやけど、レースはチェッカーを受けるまで何があるか分らない。そもそも今シーズン何度トップをブッチギッていてトラブルに泣いた事か。このトップ独走のレースが1番自分の体に悪い。いろいろな事を考えてしまい、その時間の流れるのが遅い事。後何周、まだ何周しかしてい無い。まだこんなにあるとホンマなかなかLAPが減っていかない。マシンは大丈夫か? あそこが壊れなければいいけど、あの場所はチェックしたっけ? あそこも見ておくべきやった、この前あのパーツが壊れたけど今回は大丈夫か等、とにかく次から次によくもまぁそこまでいろいろ考えてしまうなと自分でも感心するほど脳裏に浮かんでくる。せやったらレース前に気の済むまでチェックしろっちゅーねん。しかし時間との兼ね合いもあるし、もし仮にそうしたとしてもまたその上の次元で一緒になってしまう。
メカニックの仕事はどれだけ不安材料を消せるかが勝負だけど、限られた時間では全部確認するのはかなり無理がある。言い訳にはならないけど。
そんな事を考えながら吐き気と激しい頭痛と自分は戦いながら、ただストップウォッチの中で動いている数字を見つめていた。早く早くと祈りながら。
そしていよいよ最終LAPになった。サインボードをL 1として琢磨君をストレートで見送った。後もう一周して自分の目の前にその姿を見せれば勝である。
もう少し、もう少し。ストップウォッチを見つめながらそろそろ琢磨君が最終コーナーから姿を現す頃だ。来た! マシンの音がする。そしてその姿を現した。もうここで止まっても惰性でスタートラインはトップで駆け抜けられるだろう。第1レースを不意なトラブルで落とした為、この一戦はどうしても落とせない一戦であった。そこで琢磨君は踏ん張り、その手で勝利をもぎ取ったのだ。とりあえずホンマ良かった。体中から一気に力がヒュ~ッと抜けていった。はぁ~、ホンマ疲れた。もうこのままここで眠ってしまいたいわ。今はもうな~んにもやる気がおこらんわ。ただ意識が遠のいていく感じが、疲れた体と心にとても心地よかった。しかしまだもう一仕事残っている。再車検や。我々はこのDoningtonとは相性が良いのか悪いのか良く分らない。いつも速いのだが、実はな~んか落とし穴がいつも待っている。ま、その落とし穴は第1レースに訪れたからもう大丈夫やろう。車検は本当に信じられないほどあっけなく簡単に終わり、これでめでたく優勝となった。これで心底勝利を確信してホッとした。いつもこの車検が終わるまではなんだかんだ言っても手放しで喜べないのだ。ちょっと心に引っかかって。しかし今日はこれで万事OK! ほんとにほんとにおめでとう琢磨君。
この後自分達は次のレース、いよいよこの時期が来たマルボロマスターズの為にエンジンをオーバーホールする為、そのままオーニングでエンジンを下ろしてそのままニールブラウンのミニバンにエンジンを積み込んだ。そして水曜日からペンブリーでのテストに備えてスペアエンジンをマシンに積む作業をしていた為、せっかくの表彰式を見に行く事が出来なかった。とても残念であるがこれも次の勝利に向けての準備の為、仕方がない。今日のレースは終わった。このレースは今日historyとなった。重要なのは次に勝つ事だ。その為にもテストでしっかりとマスターズに向けてデータを取らなければ。

レースに勝つには、よく流れを読んで、組み立てないとだめである。後はレースの流れというか、大局感をうまくつかめば次のレースもいけるはずや。そしていいときのデータを大切にして記録して、なんでよかったか考えるようにしなければいけない。いじりすぎてもだめだし、いじらなすぎてもだめだし。マスターズは長いシーズンと違っての一発勝負だ。ここで勝てば世界一。気合入れて頑張ってこよう!

飯田一寿

第2レース決勝
POS NO DRIVER NAT TEAM CAR TIME
1 06 Takuma Sato JPN Carlin Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 22:22.570
2 14 Matt Davies GBR Team Avanti Dallara F301 Opel Spiess 22:33.171
3 11 Bruce Jouanny FRA Promatecme UK Dallara F301 Mugen-Honda 22:34.419
4 03 Andre Lotterer GER Jaguar Racing F3 Dallara F301 Mugen-Honda 22:35.351
5 05 Anthony Davidson GBR Carlin Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 22:38.248
6 01 Derek Hayes GBR Manor Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 22:41.774
7 08 Gianmaria Bruni ITA Fortec Renault Dallara F301 Renault Sodemo 22:42.672
8 04 James Courtney AUS Jaguar Racing F3 Dallara F301 Mugen-Honda 22:46.311
9 02 Jeffrey Jones USA Manor Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 22:48.486
10 07 Alex Gurney ITA Fortec Renault Dallara F301 Renault Sodemo 22:49.072
11 28 Ryan Dalziel GBR Duma Racing Ltd Dallara F301 Mugen-Honda 22:50.016
12 17 Paul Edwards USA Alan Docking Racing Dallara F301 Mugen-Honda 22:50.698
13 21 Mark Taylor GBR Manor Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 22:51.120
14 27 Jamie Spence GBR Duma Racing Ltd Dallara F301 Mugen-Honda 22:52.515
15 52 Robbie Kerr GBR Fred Goddard Racing Dallara F398 Renault Sodemo 22:56.595
Fastest Lap Takuma Sato 1:29.047
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