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そして時間は過ぎて行きいよいよスタートの時は来た。マシンをメディカルセンターがあるところのブリッジまで押して行き、予選と同じくここからマシンはコースインとなる。当然自分達は・・・今日は前もって準備体操をして体をちょっとでも慣らしておかなければ。いつも通りに琢磨君をマシンに導き、エンジンスタートと同時に今日は走った。グリッドがクローズになる前にバッテリーをスタート位置に必ず持って行かなければ! 走る走る、とにかく走る。今日はそのままグリッドに向かうが、途中何度もバッテリーを持つ手を変えたり、足が上がらなくなり、歩いたほうが速いスピードにもなりながら、足を引きずるようにとにかく走った。喉がカラカラに乾いて喉の奥が張り付いてしまったような感覚がする。何とかゼイゼイ死にそうになりながらもマシンの所に到着。肩で息をしながらタイヤプレッシャーのチェックをしていると、今度はJohnが同じように頭から湯気を出しながら到着。声にならないようなかすれ声で一言「Fucking hell・・・」と言って大きく息をしている。後はレースが終わってから車検場までの道程をまた走らねば。もういじめとしか考えられない仕打ちや。むごい。むごすぎる・・・ そんな事は関係なくスタート進行は進んで、いよいよマシンのエンジンスタート。自分は琢磨君と握手をしてコースを後にする。Johnとピットロードに並んで二人で待機する。壁の向こうではフォーメーションラップへとマシンは出て行った。今回は予選が雨だった為、使用したタイヤはレインタイヤ(良かった。レインタイヤを使って)のみの使用だった為に、今日の決勝で使用するタイヤは完璧な皮むきも何もしていないスリックタイヤでの走行。このフォーメーションで、どれだけタイヤの内圧を上げてタイヤの表面の皮むきが出来るか、スタートと最初のラップでどこまで攻められるか。ドライバーの技量がものを言うスタートだ。琢磨君は大丈夫。きっと1LAP目にブッチギリで帰ってくるはずや! マシンはゆっくりとウェービングをしながら帰ってきて、各々のグリッドにゆっくりとマシンを止めていく。最後尾がグリッドに着くと、後ろでグリーンフラッグが振られて、タワーでは5秒前の表示が出る。マシンはその排気音をいっそう大きくしてシグナルを待ち、赤が緑に点灯したと同時に飛び出していく。先頭は誰や? 自分にはゼッケン6番のマシンが1台まわりよりも早く飛び出していくのが目に入った。1コーナーに消えて行くマシンを目で追いながらサインガードへと向かう。今回の周回数は15LAPでの戦いとなっている。サインボードにL14の数字を入れてマシンを待つ。最終コーナーからマシンのエキゾーストノートが聞こえてきてサインボードを出す。思った通り琢磨君はすでにその後続とのギャップを広げながら、ブッチギリでホームストレートに帰ってきた。手元の計測では+1.34秒の差がすでに出来ている。そして2LAP目3LAP目あたりからタイヤが温まったのか、タイムは一気に上がって、その差をまたまた一気に引き離しに入った。だいたい1周で約1秒弱のペースで引き離していく。このペースは尋常ではない。乗りに乗っている琢磨君だ。自分はマシンが何とか最後まで何事も無く走りきる事を祈りながら、サインボードを入れ替えながら1周1周と見守っていった。 走っている琢磨君を見ると、いつもより、新しいヘルメットも本当にマシンとのバランスが良く、そのヘルメットは前の物よりかなり引き立っていて目立っている。本当全てがカッコいい。 そしてマシンはいよいよ最終LAPに突入した。もう少しだ。後は本当無事に何も壊れずに戻ってきてくれ。しかし、そんな心配は無用とばかりにマシンはそのスピードを落とす事無くチェッカーを受けに帰ってきた。自分はサインガードの金網によじ登って金網の上から琢磨君に手を振った。やったやった。この大事なレースで勝つ事ができた。ここで一発決めて本当によかった。もう最高にカッコイイで~! もう全てが最高や! 最終的には2位のアンソニーとは11.225秒の差をつけて3位のプリオとは何と26.316秒もの差を築き上げていた。完勝や。素晴らしい。素晴らしすぎる。そして自分達は最後の仕事、再車検を行う為に車検場へと向かった。 今回はシリーズ戦では無い為、表彰式はレース後すぐに行われた。やはり表彰式、シャンパンファイトはレース終わってすぐの方がレースの興奮、盛り上がりが持続していてこの方が絶対に感激する。しかし、自分達は残念ながら車検場での仕事があった為この表彰式は見る事が出来なかった。しかし、遠くで聞こえるアナウンスの声と興奮した観客の大声援を遠くに聞きながら満足していた。今はマシンに「よくやったね、ありがとう。ご苦労様。」って声をかけてあげたい。彼女も本当にしっかりとよく頑張ってくれた。もう最高や! レースも終わってオーニングの片付けをしていると、シャンパンボトルとトロフィーを両手に琢磨君が帰ってきた。自分は仕事の手を休めて琢磨君とガッチリと抱き合って喜びを分かち合った。本当に最高の瞬間だ。至福の時とでも言うのだろうか。本当に嬉しく、そして何よりもホッとした。 今回のシャンパンはいつものLansonではなく、F-1で使用しているシャンパンだ。これは嬉しさもいつも以上だ。そして味の方は・・・シャンパンボトルを持ってグイと一口・・・ウゲ~。ま、不味い・・・実は自分、酒類は一切駄目なんですわ。残念ながら。しかし勝った時のシャンパンは別。この時はこれは縁起物やし一口はゴクリと飲む事にしている。本当、贅沢なうらやましい悩みでしょう? 本当申し訳ない。ファンの人や琢磨君に刺されそうや。しかし、毎回シャンパンを飲みつづけていればだんだんアルコールも飲めるようになってくるかな? その為にもこれからもどんどん勝ちつづけて、シャンパンを飲むようにして酒に慣れてこなければ。だからお・ね・が・い、琢磨君! これからもシャンパンをオーダーしますね。よろしく!
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