いよいよ待ちに待った走行日初日がやって来た。今日は朝から風が強く吹いている。朝方雨が降った様でホテルの外は一面濡れている。しかし目を覚ました時はすでに雨は上がってはいるが空は一面雲に覆われている。今日は午前中は走行は無く午後に30分のフリー走行が2回用意されている。その為、午前中は比較的ゆっくりとした時間が過ぎていく。我々はマシンにガソリンを入れてウォーターヒーターで水温を上げてとりあえずマシンのチェックとオイルレベルの確認の為、エンジンをスタートさせる。
そして朝タイヤのプレッシャーが安定している時にとりあえず全てのタイヤプレッシャーを同じにして、今回は必勝を期すために念には念を入れてタイヤの外径を測定してタイヤのバラツキを最小限に留めるように注意した。使用できるタイヤは今日のフリー走行から決勝まで3SETのみの使用となる。タイヤには大きくバラツキは無い物のやはり多少の径の大小がある。それを2SET上手い具合に均一化させて、残りの1SETはあくまでもテスト用としてそれぞれ振り分けた。
後は走行時間を待つばかり。しかしいつも思うことやけどこのサーキットに到着しての1番最初の走行ってかなり緊張する。ワークショップで組み上げたものがすべて間違いなく正確に作動するかとか正確に組み立てただろうかとか要らん事まで考えてしまう。一度走って各部のチェックが済めばかなりホッとするんやけどね。毎回ながら一番初めの1周目がとにかく緊張する。1周してマシンが何事も無くホームストレートに戻ってきた時はホンマ、ホッと一息つけるね。大丈夫と分っていても心配なこの気持ちってもう15年以上経っても変わらないと言うよりも年々大きくなってきている気がする。
そしていよいよその緊張が最高潮に達する時が来た。マシンはゆっくりとピットを後に走り出して行く。予選まではこの30分の走行が2回しかない為、マシンのセッティングを煮詰めないといけないので、のんびりとしているわけにはいかない。ドイツ勢は30分位前からピットを離れてピットロード出口に並んで待っている。いくらなんでもそりゃやりすぎでしょう。我々は焦らず、しかし機敏にコースオープンとともにマシンに火を入れコースへと送り出した。無駄に出来る時間は無い。そしてマシンはホームストレートへと無事に? あたりまえに姿を現しそのまま快調に走行を続ける。良かった。何事も無く。これでかなりホッとして、肩の荷が下りた気がする。しかしまだまだ本番はこれからだ。こんな事でホッとなんてしていられない。マシンは走行を続けるが残り約20分位のところでいったんピットへと戻ってきた。マシンのハンドリングを改善する為、セッティングの変更を素早く行い、同時にタイヤプレッシャー、ブレーキ温度、タイヤ温度等測定して再びコースへと送り出す。タイムはとりあえずトップタイムを叩き出すがマシンはまだまだ満足の出来る状態に仕上がっていない。それは自分たちだけでなく他のドライバー、チームも一緒だろう。我々は次の走行に向けてかなり大きなセッティング変更を行った。時間はあまり無い。しかし自分とJohnはお互いを理解しあっているので仕事が確実で速い。安心して仕事が出来る。ホンマ良い相棒や。そして他のメカニックからは想像も出来ないような時間内での仕事量を難なくこなして余裕をもって次のセッションに備えた。隣のマシンの方はまだ仕事が終わっていない。大丈夫。まだ時間はあるから焦らずゆっくりやってね。あまり焦らせてしまってごめんね。こっちは後は琢磨君が乗り込むのを待つばかだけど。次のセッションも決めたるゼィ!

第1フリー走行
POS NO DRIVER NAT TEAM CAR TIME
1 04 Takuma Sato JPN Carlin Motorsport Dallara F301 - Honda-Mugen 1:34.635
2 01 Benoit Treluyer FRA Signature Dallara F399 - Renault-Sodemo 1:34.722
3 07 Ryo Fukuda JPN Serge Saulnier Dallara F399 - Renault-Sodemo 1:34.836
4 37 Gianmaria Bruni ITA Fortec Renault Dallara F301 - Honda-Mugen 1:34.971
5 33 Matt Davies GBR Team Avanti Dallara F301 - Opel-Spiess 1:35.193
6 12 Derek Hayes GBR Manor Motorsport Dallara F300 - Honda-Mugen 1:35.224
7 21 Markus Winkelhock DEU ADAC Berlin-Brandenburg Dallara F300 - Opel-Spiess 1:35.225
8 23 James Courtney AUS Jaguar Racing F3 Dallara F300 - Honda-Mugen 1:35.306
9 19 Tiago Monteiro POR ASM-Elf Dallara F300 - Renault-Sodemo 1:35.336
10 18 Tristan Gommendy FRA ASM-Elf Dallara F300 - Renault-Sodemo 1:35.392
11 25 Tony Schmidt DEU GM Motorsport Dallara F301 - Toyota-TOMS 1:35.418
12 48 Tom van Bavel BEL JB Motorsport Dallara F399 - Opel-Spiess 1:35.447
13 05 Anthony Davidson GBR Carlin Motorsport Dallara F301 - Honda-Mugen 1:35.470
14 47 Marco du Pau NL Van Amersfoort Racing Dallara F399 - Opel-Spiess 1:35.474
15 28 Andy Priaulx GBR Alan Docking Racing Dallara F301 - Honda-Mugen 1:35.500
そして本日2度目のフリー走行。大幅なセッティング変更がマシンにどのような影響を与えるか? 一回目の琢磨君のフィーリングからこの変更で間違いは無いはずだ。コースインと同時にモニターの一番上に琢磨君の名前が表示された。BSのZandvoortスペシャルタイヤはコンパウンドを柔らかいものを使用している為もあり、かなりグリップレベルは高いのだがその代償としてタイヤのタレも大きい。このタイヤはすでにかなり走行した為、そのタイヤの美味しい所はすでに無い上にコースコンデションも悪くなっている。その為、1回目のタイムを上回る事は無い。しかしそれはドライバーが把握していればそのグリップが落ちたタイヤでもNEWタイヤを履いた時のハンドリングを感じる事は出来る。それが出来るドライバーと出来ないドライバーとではここで大きな差が出来てしまう。ここでがむしゃらにこのコンデションにセッティングを合わせてしまうと、明日の予選で新品タイヤを履いた時にマシンのバランスを著しく崩してしまい泥沼にはまってしまう。しかし琢磨君は大丈夫。マシンコンデション、風、トラック全てを計算に入れて今の状態でなく予選、決勝を想定してマシンの開発を進める。その結果タイムは一回目より当然落ちるものの他のドライバーとの差自体は1回目よりも広げてレースに向けてかなり良い感じでのスタートを切る事が出来た。このクレバーさが今年の琢磨君の強みとなっている。データをもとに明日はもっともっとマシンを仕上げてポール目指して頑張ろう!

第2フリー走行
POS NO DRIVER NAT TEAM CAR TIME
1 04 Takuma Sato JPN Carlin Motorsport Dallara F301 - Honda-Mugen 1:35.461
2 07 Ryo Fukuda JPN Serge Saulnier Dallara F399 - Renault-Sodemo 1:35.813
3 25 Tony Schmidt DEU GM Motorsport Dallara F301 - Toyota-TOMS 1:35.844
4 01 Benoit Treluyer FRA Signature Dallara F399 - Renault-Sodemo 1:35.853
5 12 Derek Hayes GBR Manor Motorsport Dallara F300 - Honda-Mugen 1:35.866
6 41 Joao Paulo de Oliveira BRA Swiss Racing Team Dallara F399 - Opel-Spiess 1:35.938
7 37 Gianmaria Bruni ITA Fortec Renault Dallara F301 - Honda-Mugen 1:36.067
8 44 Bruce Jouanny FRA Promatecme UK Dallara F301 - Honda-Mugen 1:36.106
9 22 Andre Lotterer GER Jaguar Racing F3 Dallara F300 - Honda-Mugen 1:36.121
10 08 Toshihiro Kaneishi JPN Opel Team BSR Dallara F300 - Opel-Spiess 1:36.158
11 23 James Courtney AUS Jaguar Racing F3 Dallara F300 - Honda-Mugen 1:36.187
12 24 Nicolas Kiesa DEN GM Motorsport Dallara F301 - Toyota-TOMS 1:36.217
13 33 Matt Davies GBR Team Avanti Dallara F301 - Opel-Spiess 1:36.274
14 19 Tiago Monteiro POR ASM-Elf Dallara F300 - Renault-Sodemo 1:36.306
15 20 Stefan Mücke DEU ADAC Berlin-Brandenburg Dallara F301 - Opel-Spiess 1:36.457
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