一夜明けて迎えた予選日。今日も朝方雨が降っていたが、ホテルで朝食を食べ終わった頃には雨はすっかり上がっていた。今日初めの仕事はマシンを押して車検場までマシンの重量の確認に行く事や。しかしここピットから車検場まではかなり遠い。ピットのある同じパドック内にあるのではなくズ~ッと向こうの方まで行かなければならない。ホンマ朝から体力を使わせてくれるゼィ。しかしこの重量を確認する事はレースではとっても大切な事。ぶつぶつ文句言わんとしっかりやらなあかん! そして無事に重量もチェックし終わって長い道程をたどってピットまで到着した。と・とりあえず水くれ~ぃ! 水、水。との願いが通じたか、空からは水が落ちてきた。この水はいらないっちゅーねん! 雨である。予選まではまだ時間があるがピットはいつものように急に慌ただしくなる。「Dyson、レインタイヤのプレッシャーを調整しろ!」ってあんた、そんなもんはもうとっくに調整して今朝もすでにチェック済み。いつでもready to go!やっちゅーねん。しかしそんなドタバタの甲斐も無く?無情にも雨は上がってしまった。って、それの方がええやん。よっしゃー、これで心置きなくドライセッティングや! すると今度は「スリックタイヤのプレッシャー・・・」終わってるっちゅーねん。昨日の走行後のプレッシャーを合わせたタイヤを今日朝一番のプレッシャーが1番安定している時に計って他のもそれにちょっとエッセンスを加えて準備OKやっちゅーねん。そんな事は言われるまでも無くすでにパーフェクトや。何でもやってるで~。次はなんじゃい! すると今度は予想に反してというよりも思ってもみなかった事が勃発した。なんとリアウイングのエンドプレートの形状がエアロデバイスとしてレギュレーション違反だという。おまけにオーバーハングも。あの~、それって昨日全て言われた通りに終わらせて自分たちで測定してOK! 何の問題も無いって言ってたやん。それが何故? エッ、昨日は早く帰りたかったから今朝やるつもりだったって・・・そんなの走行前にやる仕事ちゃうやん。と、言うよりもサーキットでの仕事や無くってワークショップでの仕事のはずでは・・・しかし今更そんな事を言っても仕方が無い。ジグで寸法を測って・・・エッ? BSタイヤだから違う? 昨日言え! じゃぁどうやって・・・おいおいそんな目見当でスケールを覗き込んでも見る位置で変わるようなのではあかんや。結局車検場からオフィシャルな物を借りてきて削る削る。何とかOK! 掃除をして工具を片付けて一息ついたら、なんとBoyoは気に入らないらしくまだ削っている。おまけに自分の汚した所の掃除もしないし。Johnもちょっとお怒りモード。こういう時こそ落ち着いて対処しなければいけない。後は翼端板の空力デバイスみたいにしてある所を切り取ってオフャルに確認してもらい全て終了・・・だよ、Boyo。早く次の仕事に取り掛からないといけない時間なんですけれども・・・と、いうホンマにスタート前のドタバタ劇って何とかしないといけないよね。これでは長いシーズン中ミスが起こる可能性が出てくる。もっと効率よく確実な仕事の進め方を検討しないといけないと強く思う出来事だった。
今回の予選は奇数偶数に別れてのセッションとなる。我がカーリンではまずアンソニーが奇数組での走行。琢磨君は次の偶数組での走行となる。まずは奇数組がコースイン。琢磨君はそれをモニターで見つめている。その姿は落ち着いて堂々としている。
周りは琢磨君の事をプレッシャーに弱いとか大一番の舞台に弱いとか言っているが、キッパリと言ってそれは間違いである。今年琢磨君は成長したとみんなは言うがそれは正しくもあり間違ってもいる。琢磨君は昨年から強かった。今年はその強さに磨きがかかっているだけだ。それにプレッシャーや国際戦の大舞台でのミスは琢磨君のミスではない事が大半を占めている。巡り合わせが悪いのだ。たとえば昨年のスパを思い出してもどう見ても間違いなく勝てるレースを我々のミスで落としてしまった。しかしギアをリペアしている間怒るのでもなくそしてあきらめる事も無くモチベーションを保ってコンセントレーションを保ち、リペア完了と同時にすぐに気持ちの切り替えをしてコースインしてからの追い上げは凄まじい物があった。昨年のこのMastersでもスタートシステムの不備からエンジンストールをしたがこれもドライバーのミスではなく我々のプログラムでのミスである。しかし再スタート後にあの混雑の中でそのレースのファーステストラップのわずか0.1秒落ちと何の邪魔もいないトップが出したタイムに最後日から渋滞の中どんどん順位を上げていってのこのタイム。どんな状況になっても決してあきらめずにそこでベストを尽くし最後には上位に上がってくるこの逞しさ。みんな結果でしか見ていないだろうか。本当の琢磨君は図太く逞しく強いのである。それが今年のBrands Hatchのレースにも現れている。第1レースをポールからスタートに失敗して優勝を逃したが、第二レースに向けて気持ちをしっかり切り替えて完璧なスタート、レース運びをして完勝した。ついこの間のDoningtnもそうである。これこそ琢磨君なのだ。モニターを見つめる琢磨君を見ながら、自分はそんな事を考えていた。
予選は上位陣を含むほぼ全てのドライバーが2SET目のNEWタイヤを投入していた。タイムも中古に比べて約2秒のタイムアップだ。当然の事ながら昨日のフリー走行のタイムよりも遥かに早いタイムである。大雑把に計算すると琢磨君は33秒台中盤から後半位のタイムになるのではないだろうか。
奇数組の予選も終了していよいよ琢磨君の出番がやって来た。奇数組のトップは日本でもお馴染みの童夢のF-3ドライバーBenoit Treluyerである。彼にとっては古巣でもあるシグネイチャーからカーナンバー1を引っさげて参戦。そして、童夢の田中弘監督の教えがあってのこのポジションタイムなのであろう。かなり手強い相手だ。しかしそんな事は関係ない。琢磨君にかかればそんなのイチコロさ。ここはいっちょ格の違いってやつを見せてやりましょうか!
まずはコースコンデョンとマシンバランスの確認をする為に昨日使用した中古タイヤでのコースインとなる。コースオープンと同時に琢磨君はコースに飛び出して行く。計測2LAPした後ピットイン。いよいよNEWタイヤを履いた。
ここZandvoortは午後になると風が出て来てコースに砂が舞い路面はダスティにスリッピーになり、コースコンデョンは悪くなりタイムアップは難しくなる為、午前中の予選が事実上のタイムアタックである。我々は午前中に新品2セット投入してポールを獲得して午後は決勝に向けたセットアップに専念する予定である。もちろんその時の周りとのタイム差次第だけれども。
とにかくタイヤを新品に履き替えてのコースイン。ゆっくりとタイヤを暖めプレッシャーを上げて行く。プレッシャーはタイヤのグリップが最初に出る美味しい時にBESTなプレッシャーになるように調整してあるからね。最初に一発ガツ~ンとかましてや!
しかしここであっさりと両グループ合わせてのトップタイムをマークしてしまった。しかしその後な・な・何とコースアウトをしてしまい、おまけに左側のフロントとリアのホイールを曲げてピットに帰ってきた。走行不可能・・・しかしタイムはその後も破られる事無く暫定ポール決定。幸か不幸かその為、2SET目のNEWタイヤは後に温存する事に決定した。この温存で今後いろいろな可能性が出て来る。間違いなくいい方向に向かっているね。転んでもただでは起きないってこういう事を言うのだろうか? マシンを壊してもこれなら結果オーライ。そうかぁ? ま、今回は許したろ。とりあえず暫定ながらポール獲得。この調子で次も行ったるで~! おっと、この調子でいかれるのも困るから砂遊びはほどほどにね。お・ね・が・い。そして車検場までの長い道程を押していく。車検場では名物オフィシャルのピーターがタイヤのマーキングのチェックをする時に左だけ当たっていてマーキングが消えている為、「これからは内側にもマーキングしておこう」って、しっかり内側にもマーキングしてくれました。良かったね琢磨君。これでいつでも安心OKさ・・・って、違う気がする。駄目よ。もうオイタしちゃ。

第1予選偶数組
POS NO DRIVER NAT TEAM CAR TIME
1 04 Takuma Sato JPN Carlin Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 1:33.677
2 22 Andre Lotterer GER Jaguar Racing F3 Dallara F300 - Honda-Mugen 1:34.265
3 08 Toshihiro Kaneishi JPN Opel Team BSR Dallara F300 - Opel-Spiess 1:34.321
4 48 Tom van Bavel BEL JB Motorsport Dallara F399 - Opel-Spiess 1:34.391
5 24 Nicolas Kiesa DEN GM Motorsport Dallara F301 - Toyota-TOMS 1:34.404
6 12 Derek Hayes GBR Manor Motorsport Dallara F300 - Honda-Mugen 1:34.516
7 18 Tristan Gommendy FRA ASM-Elf Dallara F300 - Renault-Sodemo 1:34.562
8 28 Andy Priaulx GBR Alan Docking Racing Dallara F301 - Honda-Mugen 1:34.620
9 02 Mathieu Zangarelli FRA Signature Dallara F399 - Renault-Sodemo 1:34.731
10 14 Jeffrey Jones USA Manor Motorsport Dallara F300 - Honda-Mugen 1:34.744
11 16 Paulo Montin ITA RC Motorsport Dallara F300 - Opel-Spiess 1:34.867
12 30 Kousuke Matsuura JPN Prema Powerteam SRL Dallara F301 - Opel-Spiess 1:34.828
13 42 Ryan Dalziel GBR Duma Racing Ltd Dallara F399 - Opel-Spiess 1:34.920
14 20 Stefan Mücke DEU ADAC Berlin-Brandenburg Dallara F301 - Opel-Spiess 1:34.943
15 32 Ryan Briscoe AUS Prema Powerteam SRL Dallara F300 - Opel-Spiess 1:34.974
BACK NEXT