夜中にも30分おき位に何度も目が覚めてしまい夢の中でもマシンのメンテやレースをしていて深い眠りにはなかなかつけない。しかし皆に平等に朝は来る。決勝日の朝は激しい雷の音と屋根を叩く激しい雨の音から始まった。雷は朝の4時頃に轟いていたが7時頃には雷は収まったもののいまだに雨はその激しさを続けている。窓の外はもちろん一面びしょ濡れ状態。これでは決勝レースはともかく朝のウォーミングアップはレインセットか? などと思いながら朝食をとった。今日は最終日の為、ホテルから荷物を持ってサーキットまで行かなければならない。当然傘や雨具など持ち合わせてはいない。この雨の中荷物を持ってサーキットまで行かなければならないのかとちょっと落ち込みモード。しかしここオランダはZandvoortは我等の偉大な?大英帝国よりも天気の流れが激しい。もっと手っ取り早く言うとイギリスは雨が多くちょっとの晴れ間と多くのシトシト雨だが、ここは多くの晴れ間と少しの時間の大雨が交互にやってくる。祈りが通じたか(誰も祈っていないけど)ホテルを出発する時間にはまだ空一面雲に覆われているものの雨はすっかり上がってしまった。我々は荷物を肩からぶら下げてサーキットまで歩いて向かっていった。空には所々晴れ間も出て来た。ゲートでパスをチェックしてもらい、パドック入り口のトンネルの所まで来ると何故かそこには人がたまっている。邪魔やなと思い、人ごみを掻き分けて行って見ると・・・なんとそこには大きな池が出来上がっている。トンネルの下を今朝方の雨が襲いトンネルの通路は一面の水が溜まってしまっていた。これでは通る事は難しい。意を決した自分はシューズ、ソックスを脱ぎ捨てズボンをひざまで捲り上げてその池を敢行突破する事に。ザブザブと勢い池を進んで行ったが1番深い部分で水の深さは膝を越えてしまう。再び進路を後ろに戻してスタート地点に。今度は恥も外聞も無くズボンを脱ぎ捨ててみんなの拍手と歓声に両手を上げて応えながら再びサーキット上陸目指して突き進んでいく。中央の1番深い所で自分の膝上20cm位まであった。う~ん、これならコギャルの短い制服のスカートなら濡らさずに上陸できるななどと思いながら上陸成功。途中右側のシューズだけ水に落としてしまったけどnever mind。細かい事は気にしない気にしない。とりあえずズボンだけ履いて足は乾くまで裸足でのWorking。ピットに辿り着く頃には足も乾いている事でしょう。しかし、一番の心配は琢磨君はあの池を泳いで?これるのだろうか? 雨は得意と言うけれどもこれはちょ~っと違うような気もするし。ま、最悪はおいらがお迎えに参上して水の中をおんぶして渡りましょうか! 江戸時代違うっちゅーねん。早くポンプ車を使って水を排出せなあかんよ。一応国際格式のレースなんやから!

ピットに着いてマシンからボディカバーを外してバッテリーを取り付け、ウォーターヒーターで水温を上げてマシンの暖気をする。タイヤは昨日の予選一回目に使用した少し磨耗の進んだタイヤ。もちろん1番程度の良い皮剥きをしてタイムを初めからドーンと出せる状態にしたタイヤはレースに向けて取っておく。プレッシャーも予選、フリー走行とは多少違うセットにして備える。レースは長いので後半上がり過ぎないようにしなければならないし、逆にスタート直後の1LAP目に独走態勢を築く為にもそこでのコンディションも良くしなければならないし、やはり決勝用が1番考えてしまう。予選はやはり一周のタイムなのでセッティングもエッジの上を走るように頂点を尖らせてピーキーでも、限界を高くして一発をその1周に集中して行くようにしても、決勝はやはり長丁場になるので頂点をダルにして乗りやすいタイヤに優しいセッティングに少し振らなければならない。あくまでも突き詰めた上でのホンの少しの事やけれどもね。そのセッティングの変更を受けるタイヤもそれに合わせて多少変えないとね。新品と中古では最初のスライド量やグリップレベルによってプレッシャーの上がりも変わってくるし。初めにプレッシャーが上がってしまうとなかなか元には戻ってくれないし、レースではクールダウンも出来ない。それに上がりすぎてしまうとタイヤも滑りやすくなり、その結果ますます高くなるし、タイヤの表面のゴムも本来のグリップを発揮せず変な癖がタイヤについてしまう。またその癖は一度付くとなかなか元には戻ってはくれないものなんよね。簡単なようで奥が深い所だ。出来るだけベストな状態にする為にも日頃からのデータを蓄積していかないとね。
コースは少し湿ってはいるものの完全にドライ。セッティングももちろんレースシュミレーションを行うべくレース用。レース距離もいつものイギリス選手権よりも遥かに長い為、ガソリンの搭載量もかなり多めになる。いつもとは違うマシンの状態での過重移動に合わせたハンドリングもチェックしなければならない。タイヤの磨耗もしっかりチェックする為に大切な走行や。しかし無理は禁物。あくまでもマシンのバランスを確認する為に慎重に、しかもメリハリをつけて走行してデータを収集させなければ。
タイム的にはそれ程上位に来なかったが何の心配も無い。これはあくまでもレース用のデータ収集とフィーリングが大事なのだから。それに他所のチームもそれなりの作戦があって必ずしもガソリンが多めに入っているとは限らない。少なめでタイムを出し、ドライバーのモチベーション、自信をつけさせる所もあるだろうし他のチームのやっている事は分らないし関係ない事である。大切な事は自分達のポジションと何を考えてその為にどういう事をやれば良くて、その為に“今”何をしなければならないかである。我々には自信がある。その為にこの朝のウォームアップは大変有意義に終了したのであった。

BACK NEXT