そうこうしているうちに時間はどんどん過ぎていき2レース目の予選の時間となった。2回目の予選は気温もかなり上昇して路温もそれにつれかなり上昇していった。このコンデョンにマシンをどう合わせていくか? 実は秘策?があった。とはいえこの作戦其の二は完全なパクリである。それはまずインターバルで変更したセットアップの確認を1回目の予選で使用した中古タイヤで確認して、その後NEWタイヤでタイムアタック、そしてピットインして発熱したタイヤをなんと水でタイヤを冷やしてサイドタイムアタックするという作戦だ。実は1回目の予選終了後にマシンを再車検の為、マシンを車検場まで押して行ってウエイトゲージの順番を待っている間にF-3スカラシップクラスの予選をエンジニアの方々は眺めていた。車検場の隣のピットは琢磨君の古巣のDIAMOND Racingのピットだった。そこにマシンがピットインするとメカニック達が水を入れたバケツを持って来てタイヤにかけて冷やしているのを驚きの表情で見ていたのをオイラは見逃さなかったのさ。その後ピットに戻った後に小僧に命令してサーキットに備え付けてある大型のゴミ箱を水洗いさせてそのゴミ箱に水を入れているのを見て、もしや? と思っていたら・・・分りやすい人達や。しかし自分の経験から言わせてもらうとこの水冷は昔約15年ほど昔はF-2、そしてF-3000、GCなどの予選でよくやっていたが、結局タイムは冷やす事によって少しは回復するが、新品をつけて出て行ったタイムの方が確実に速かった記憶がある。しかし発熱したタイヤを引き締める為にも悪い方法では無いが、予選一発のタイムを出すには新品をおろした後に照準を絞った方が確実に速いと思う。 その予選は予定通り今度はセッション開始と共にコースイン。数ラップした後ピットイン、タイヤを新品に変える。そして再びコースイン。タイムを計測する。ここでモニターの2番目に琢磨君の名前が表示された。その上にはまたしてもアンソニーの名前が。タイムはそれ以降伸びて来ない。残り7分をきった所でサインボードにINの表示を入れて琢磨君をピットに呼び戻す。マシンがピットに止まるとタイヤを緩めてジャッキアップする。外したタイヤをゴミ箱の水に沈めてタイヤを冷却する。その間にも時間はどんどん過ぎていく。タイムアタックする時間が無い。急いでタイヤを再びマシンに取り付けて再びマシンをコースに送り出す。サインガードに戻ってモニターを見ると琢磨君は3番手までドロップしてしまっている。時間はあとわずか。計算ではタイム計測は2回しか出来ない。必死でタイムアタックをする琢磨君。しかし最終的にタイムアップは出来ずに3番手というポジションで2回目の予選を終えた。ピットに戻ってきたマシンのタイヤを見るとフロントタイヤにかなりのアブレーションが出ていた。ひどいアンダーステアっぽいタイヤだ。しかしこの状態で3番手のタイムとは凄い。ホンマに恐れ入り矢の鬼子母神ってところや。さすが琢磨君。どんなマシンでもタイムを出してしまう能力には心底感心させられる。しかし今回は満足出来るセッティングを出して上げられなかった事が残念で仕方がない。ポールはまたしてもチームメイトのアンソニーである。彼は昨日までの不調が嘘のようにポジションアップしている。ここがアンソニーのすごい所である。それはテストでは満足なポジションにいなくても走行後に琢磨君のデータと自分のデータを重ね合わせて琢磨君の走りをある程度コピーしてしまう。自分の足りないところを琢磨君によって補い、最後には帳尻を合わせてタイムアップしてくるのだ。しかし琢磨君のマシンが本当ただ普通であればそれだけで琢磨君の走りは真似は出来ないほど琢磨君の走りは凄く、アンソニーは頭ではわかっても体が限界を超えてしまい、とても真似出来ないのやけれども肝心のマシンがこれではさすがの琢磨君でさえタイムを伸ばす事が出来なかった。アンソニーはこれで今日この後行われるKnockhillの第2レースの予選と明日行われるRd 21.22のレースと、ここThruxtonで行われる3レース全てポールポジションである。これは屈辱以外の何物でもない。予選最速男、音速の王子の琢磨君の代名詞のポールポジションを連続してチームメイトに取られるとは。原因は100%マシンにあるのは明白なのだが、リザルトとして残るのはその結果だけである。マジでホンマにホンマに超悔しい。ギリギリと歯軋りをしてしまう。クッソ~ォ! この借りは今日と明日のレースで必ず晴らしたるかんな。この悔しさを吹き飛ばして流れを呼び戻す為にはとりあえず今日この後行われるKnockhillの順延レースに勝つ事しか方法は無い。そしてそこでもう1度態勢を立て直して明日は一気にチャンピオン獲得に向けて突っ走ってやるかんな。この屈辱をバネにしてこの後のレースは必ず勝つ! いや、勝たねばならない。これはチャンピオン獲得の為に必要な試練であり、これに勝たなければチャンピオンなど程遠い。琢磨君は問題ない。問題なのは我々の方である。今一度昨日からのデータを確認しなおして絶対にミスる事無く次のレースは決めなければならない。これは我々の使命である。褌の紐を締めなおして気合入れていかなければ! まだまだ何も終わってはいないのだ。とにかく今日行われるレースに向けて気持ちを入れ替えて引き締めて戦いに臨んでいかなければ!
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