今日の第1レースと第2レースのインターバルはかなり長い時間が空いている。その時間の中でマシンのバランスをとるべく我々はチェックとセットアップの変更を行った。次は今シーズンの総集編とも言うべきレースになる。ここで勝てば文句なしのチャンピオンが決定する。決してミスは許されないのだ。現在のポイント差は事実上ではチャンピオンは決まったも同然だが、正確にはまだマジックが出ているだけであって決まりではない。それよりも勝ってチャンピオンというのがとても大事だと思う。その為には琢磨君ではなく我々がしっかりとしなければいけない。我々のキャラクターとしてはここでなんかポカがでるようなイメージがあるが、そんなものもここで一気に払拭しなければならない。それにこの歴史に残であろうレースは琢磨君にとっても本当にこれから先の記念すべき大事な足跡としてのレースになる。その大切なレースを勝利で自分達もお祝いしたい。いつもと一緒のレースとはいえやはりかなり緊張するというのが今の本音である。どうか何事も無く無事に終わりますように・・・
天気はもうこれもお約束。大事な第2レース前になり晴天だった空はみるみるうちに曇ってきた。まさに今シーズンを象徴しているかのような天気だ。という事は雨は大丈夫。結果的にはまた晴れ間が出てくると言う事やね! そしてスタート前になった・・・ほ~ら見てごらん。思った通り雲は何処かへ行ってしまいサーキット上空はまたしても晴れ間が広がって行った。この大空のように今の天気のようにこのレースは気持ち良く思いっきり戦って欲しいと思う。がんばれ。気合を入れて! 意識が集中して神経が研ぎ澄まされてきた。さて、いよいよ時は来た。さ~ぁ、行こうぜィ! 勝利が俺たちを待っているぜ! 
目の前にあるレースが大事や、チャンピオンはその積み重ねであり、そんな事を考えるよりも今目前のレースに勝利する事が大事だといつも偉そうに言ってる割にはいざチャンピオン獲得できるという事が実感として沸いてきて、尚且つそれが本当に手の届く所にあると思うと極端に緊張してくる。なにも自分が緊張してもしゃーないしする必要も無い、というよりあってはいけないのやけど・・・なんか今までのそのレースよりも緊張している様な気がするが。しかしそれは過ぎ去った過去のレースはその時の雰囲気を忘れて現在が実感としてあるからだけと言う話もチラホラ。それは正しい! いつも通りやるだけさ。この平常心が大事なんや。って、いつも平常心でいろっちゅーねん。
そしてガレージで琢磨君はマシンに乗り込む。大丈夫。マシンさえちゃんと走れば負けるわけ無い。勝てるに決まってる。ドライバーのポテンシャルは飛びぬけている。ドライバーには何の心配も不安も無い。
マシンに乗り込みピットロードオープンの時を待つ。コースオープン。琢磨君はエンジンスタート。ピットロードには既に何台ものマシンがコースへと向かって流れている。そのマシンの切れ間を待ってJohnの合図でマシンの流れるピットロードへと合流していった。琢磨君はそのピットロード出口でいったん停止してエンジンにリミッターを当てスタートの練習と確認をして、ホイルスピンをしながらコースへと出て行き、1周してグリッドにマシンを停める。ポジションは3番目。本音を言えばチャンピオンを決めるのにはポールからカッコよく飛び出して行きたかったけれども仕方が無い。でも大事なのは決勝でのパフォーマンスや。予選での速さももちろん大事やけれども。しかしリザルトは決勝が残す物である。このポジションでも勝利を狙うには充分である。何よりこの3番目とは昨日ここで行われたKnockhillの順延レースとポジションと一緒である。あのレースは失いかけていた流れを琢磨君が自力で繋ぎ止めた貴重なレースであり、そのポジションと一緒や。これはゲンが良いとしか言い様が無いやろ。何でもポジティブに(能天気って事?)考えを自分の都合の良いように自分勝手に変えてしまうおいらの思考はすでにこの時「オッ、なかなかエエやん。」となぜか変わっていた。納得はしていないけど。しかしグリッドに到着してみると本来3番手である位置が昨日のクラッシュで、このレースの予選2番手のプロマテクメのBruce Jouannyが出走していない為、グリッドに空きを作るのではなく1台づつ繰り上がってのポジションとなっていた。なんかへん。だけどま、いいか。これって女神様が向こうから言い寄ってきたようなもんやね。
グリッドではTVも琢磨君中心で、レポーターのアマンダがマシンの周りを歩きながらTV用のコメントを撮影した。何度も何度もNGを繰り返しながら・・・おいおい、アマンダちゃん、こんな所でNGや内容についてディレクターともめるなちゅーねん。おまけにTV映像の邪魔になるからマシンから離れろだのエー加減にせいッ!っちゅーの。何の為のカメラや。自分達はマシンを最後の確認をせなあかんのや。TVの為に仕事をしているわけや無いっちゅーねん。ま、アマンダちゃんがエッチなフェロモン出してるから許したるけど・・・エッ、駄目? ごもっともです。でも近くで見たら・・・
そしてそのTVクルーも退去。ちなみに今日はチャンピオン決定をカメラでその瞬間を収めようという重要な役割の為、またしてもオンボードカメラを車載させられてしまった。この大事な時に・・・しかしこれは歴史に残る記念すべきレースである。これからの記念の為にも映像として残しておくのも良いよネ。よっしゃ~、今日は許したる。っていつも許してるけど。というよりも許す許さないの話では無く選択権は我々には無いのであった。そして彼らが退去して我々もJohnと自分を除いて全ての人間達がコースから退去して行った。一瞬の静寂が訪れた。これから最後の聖戦が始まろうとしている。
エンジンをスタートさせて琢磨君と握手を交わしてグリッドを後にした。フォーメーションへと走り出してコースをゆっくりまわって1LAP。再びグリッドでマシンをストップさせて隊列が整うのを待ち、後はシグナルを待つばかりとなった。レッドシグナル点灯マシンの鼓動が高まる。そしてグリーンが点灯した瞬間にマシンは勢いよく弾かれたように飛び出していった。しかし1コーナーではアンソニーに並びかけるものの抜くまでは行かなかった。しかしチャンスはある。焦らずにスリップに入ってその瞬間を待つのみ。そして最終コーナーからマシンの音が聞こえてきた。その音はだんだん激しさを増して行き最終コーナーからその姿を現した。しかしここで自分は自分の目を疑った。先頭はアンソニー。しかしその後に琢磨君のマシンがいない。1、2、3とマシンを数える。琢磨君はアンソニーから遥か後方の集団の中にいた。何が起こった? ピットがざわめき立つ。そして次のLAPではそれよりも順位を落している。これは尋常ではない。ストレートを走るマシンの挙動やタイヤ、ウイングなどチェックするが良く分らない。琢磨君からBoyoにラジオで連絡が入った。エンジンがフケない。何ということかこのクソ大事な一戦にまたしても第13戦の時のCastle Combeの時とまったく同じ症状が出てしまった。なんちゅうことやねん。怒りにも似た気持ちがふつふつと湧き上がってきた。どうしよう。どうしようも無い。なんでこんな時に・・・いくら考えても悩んでも後悔しても後の祭りである。事実は目の前に展開されているのである。マシンはなんと信じられない事に12位まで落ちてしまった。今の琢磨君の気持ちを思うと悲しくて仕方がない。本当に悔しく無念な思いで走っていると思うと・・・この時自分の頭の中では信じられないような事を考えてしまった。今日このままでチャンピオンを決めるのはよそう。今日はもう充分だ。チャンピオンは次のBrandsHatchで勝って決めよう、と。しかしその考えはすぐに改めた。何を言っているんや。琢磨君はこんな状況の中、あきらめずに頑張っているやないか。自分がそんな事でどうする。本当に申し訳なく恥ずかしい事を一瞬でも考えてしまった自分が情けない。結果はどうなるか分らない。しかし最後まで決してあきらめる事無く戦いつづける事が重要なのや。結果はそのあとの事だ。とにかく今は琢磨君を信じて応援しよう。レースの結果はともかく今日ここでなんとかチャンピオンを決められますように。もう祈るような気持ちでサインボードの周回数を入れ替えていった。チャンピオンポイントで2位にいるManorのDerek Hayes は3位を走っている。しかし2位との差はそれほどなく、テールtoノーズだ。このままではどうなる? もう訳もわからぬままとにかく今日初めてJaguarのJames Courtneyを1番応援した。頑張れ、コートニー。負けるな! そのうちに2位と3位の差は広がり、事もあろうかコートニーは1位のアンソニーに襲い掛かってきた。オイオイ、大丈夫か? あかんて、無理したらあかん。アンソニーとコートニーは昔からのライバル同士でお互いにあいつには負けたくないと常日頃から思っている。そんな二人がトップ争いをドッグファイトで演じたら・・・頼む、お互い接触して2台いなくなったりするなよ。もしそんな事になったらデレクがトップで優勝してしまうやないか。お願いだから落ち着いて走ってね。レースは終盤になった。その時雨が降ってきた。滑りやすいコンデョン。おまけに全車スリックタイヤでの走行だ。こんなドライバーのテクニックが物を言うコンデョンでは琢磨君は抜群の速さと安定性をもっている。あのマシンでこのコンディションの中追い上げを開始する。信じられないようなテクニックだ。普通このようなコンディションでのスリックでは追い越しどころかまともに走行するのも難しい状況なのに、その上完璧でないマシンでどんどん追い上げていく。もう異次元の走りだ。そしてポジションはなんと8位まで追い上げてきた。このままではどうなる? あー頭が混乱してようわからん。とにかくコートニー、頑張れ! しかし事もあろうか残り数LAPを残した所でそのコートニーは滑りやすい路面に足をすくわれなんとスピン! デレクが2位に上がってきた。ウ~ン、もう、コートニーの役立たず。しかし雨足は一層激しさを増して行き、オフィシャルはこの状況では走行が危険と判断してレースは赤旗をもって終了となった。という事は赤旗提示の1周前の順位で2位は役立たずのコートニーという事でデレクは3位のまま。琢磨君は自力で8位まで挽回してポイントをGetした。これでチャンピオンは確実に決まった!

第2レース決勝
POS NO DRIVER NAT TEAM CAR TIME
1 05 Anthony Davidson GBR Carlin Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 20:52.884
2 04 James Courtney AUS Jaguar Racing F3 Dallara F301 Mugen-Honda 20:53.136
3 01 Derek Hayes GBR Manor Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 20:55.704
4 21 Mark Taylor GBR Manor Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 20:56.901
5 14 Matt Davies GBR Team Avanti Dallara F301 Opel Spiess 20:57.285
6 18 Andy Priaulx GBR Alan Docking Racing Dallara F301 Mugen-Honda 20:57.891
7 03 Andre Lotterer GER Jaguar Racing F3 Dallara F301 Mugen-Honda 20:58.591
8 06 Takuma Sato JPN Carlin Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 20:59.689
9 28 Ryan Dalziel GBR Duma Racing Ltd Dallara F301 Mugen-Honda 21:00.197
10 12 Atsushi Katsumata JPN Promatecme UK Dallara F301 Mugen-Honda 21:04.830
11 08 Gianmaria Bruni ITA Fortec Renault Dallara F301 Renault Sodemo 21:05.248
12 02 Jeffrey Jones USA Manor Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 21:06.883
13 27 Jamie Spence GBR Duma Racing Ltd Dallara F301 Mugen-Honda 21:15.614
14 55 Michael Keohane IRL Meritus Racing Dallara F398 Toyota 21:16.162
15 52 Robbie Kerr GBR Fred Goddard Racing Dallara F398 Renault Sodemo 21:16.874
Fastest Lap Anthony Davidson 1:07.367
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