|
いよいよ迎えた決勝日の朝。今日は朝から素晴らしい天気で始まった。しかし、ここで難しいのが路面温度に左右されやすいタイヤプレッシャー(もちろんセッティングもやけど)をどのように設定するか。ま、そんな事、過去のデータや週末のプレッシャーの変化等で、もうばっちりやで。 その朝のウォーミングアップではセッティングも決まり、かなり良い感じでの走行。これなら行ける! チームの誰もが思った。なんと言っても4番手とはいえ、2列目からのスタート。充分勝ちを狙えるポジションにいる。いつものようにスタートでの勝負や!
決勝までのインターバルでは、いつものルーティンワークをこなして、ほんの少しのセッティング変更をする。決勝が行われる午後はもっと暑くなり、過酷なレースとなることやろう。路面温度もかなり高くなり、タイヤも後半タレてくると思われる。このタフなレースを戦い抜き勝利するのは琢磨君しか居ないでしょう!
時間がだんだん迫ってきた。自分達はトラックのオーニングからマシンを押してピットまで向かっていく。ジリジリと太陽が照りつける中、寒い国から来た我がイギリス組は汗をダラダラ流しながらの移動やで。Johnは頭が日に焼けるとサンオイルを頭に塗りたくっている。これでみんなこんがりときつね色? う~んセクシーや・・・見たくないわ!
ピットにたどり着き、カウルを外して最後の調整とエンジンの暖気を行う。予めウォーターヒーターである程度水温を上げておいたので、暖気はスムーズに終了。オイルレベルの確認と簡単なエンジンチェックを行い、カウルを被せてきっちりとライブロックファスナーを止める。後はドライバーが乗り込むのを待つだけや。 そして琢磨君登場! ゆっくりと身作りをしていく。ヘルメット、グローブを左側のサイドポンツーンの上に並べて置く。イヤープラグを少し水に浸して耳に入れる。このイヤープラグには、無線のスピーカーのような感じで無線の声が直接耳に入るようになっている。そしてフェイスマスクを被り、位置を整え、髪の毛をしっかりマスクの中に入れて、マスクの裾をレーシングスーツの中に入れて、イヤープラグの無線のコードを脇から取り出す。ヘルメットを被って、しっかりとベルトを締めて、無線のコードをヘルメットにしっかりと差込み、スーツの裾を引っ張り、手のひらでそれをちょっと引っ張りながら、サイドポットに並べたグローブを手に左側からはめていく。左右はめ終わった所で、グローブに付いているマジックテープを止めて用意終了。いよいよマシンに乗り込んでいく。 自分はマシンの左側に立ち、ステアリングを外して琢磨君を待っている。乗り込む前にドライバーのシューズの裏が汚れていたり、濡れていてペダルが滑るといけないので、まずは琢磨君のシューズの裏を左右ウエスでふき取り、乗り込みやすいように腰ベルトを両手でしっかりと広げて、琢磨君が乗り込むのをジッと待つ。琢磨君は両手をモノコックの両側に置き、シートに足からスルリと滑り込むように潜って行く。まずは腰ベルトをしっかりとバックルにはめ込み、又の間から二本の又ベルトを取り出し、左右の位置を整えながら所定の位置にベルトを這わせる。肩ベルトを左側からドライバーの体に這わせながら、左の又ベルトをギュッギュッと締めながら、左の又ベルトを腰ベルトのバックルについているステーに通して、左の肩ベルトを通してバックルに差し込む。次に右側を同じようにしてバックルに差し込む。次にヘルメットに付いている無線の配線を、マシンに付いているコネクターに差込み、その後左の肩ベルトを1回締めて右を1回締める。次にまた左に戻って2回締め右を2回。そしてまた次に左に戻って、今度は3回締めて右を3回。ステアリングを取り付け、配線のコネクターをパネルに取り付けてミラーの確認、無線のアンテナの確認をして、いつものように儀式は終了。自分はジャンプバッテリーの所に向かい、戦闘体制をとる。(なっ長~い。読んでいて飽きたでしょう。ごめんなさいね)いよいよマシンに火が入り、マシンはゆっくりとピットロードを進んでいく。マシンがコースインするまで自分達はマシンを見送り、無事コースインするのを確認した後にピット作業の準備に取り掛かった。このレースはウォームアップがあるので琢磨君はピット前を一度通ってグリッドに着く事にしていた。まずピットロードを通過して自分達はコースに向かっていった。
この伝統のPAUは市街地レースである。その為、コースには普通の道路のペイントや、コースのわきには普通のアパートや家が立ち並んでいる。そしてそこに住んでいる人達は、テラスにテーブルを並べて、家族や友人たちと自分の家から見物している家族が多い。ワインを飲みながら、パーティーのようにみんな楽しんでいるように見える。うらやましいかぎりやね。そしてそんな家を眺めて気が付いたのは、何処の家の窓にもシャッターが付いている。何件か留守なのか、本当に普通の工場に付いているようなシャッターがしまっている。やはりイギリスと違ってフランスは治安があまり良くないのやろうか?
そうこうしているうちにマシンがダミーグリッドに到着。Johnがホイルのトルクを再確認している間に、自分はタイヤプレッシャーのチェック。そしてタイヤについた小さなゴミやコースの掃除をしてウイング、カウル類のボルトのチェックをこなしていく。今回はかなり暑い為、マシンの琢磨君にスポンサーロゴの入った傘を差した。水着でにっこり笑いながら傘をさせなくてごめんね。エッ、見たくない? ごもっともです。でもそんな事を考える程、実際にはそんな余裕はまったく無い。緊張感は最高潮。きっと周りから見たらかなり危ない奴に見えている事と思うくらい、眉間にしわを寄せて目を吊り上げているんやろうね。実際は。そんなこっちゃあかんのに。そんな事を自答しながらもう16年。いつになったら少しは余裕が出てくるのだろう。もっとしっかりしんとあかんね。
そしてスタート5分前、3分前の表示が次々に表示され、いよいよ1分前のボードが提示された。そこでマシンはイグニッションON。エンジン始動。自分は琢磨君とガッチリ握手してコースを離れる。そしてピットロード入り口でスタートして、マシンが1コーナーをクリアするまで待機する。グリーンフラッグと共にマシンはフォーメーションの旅へと向かっていった。そしてマシンが各グリッドに着き、スタートの時を待つ。自分達も少し前かがみになりながら、その時を待つ。自分達の鼓動もこの時が最高潮に激しくなる。無事にスタートできますように! シグナルがグリーンに変わった瞬間、各マシンはいっせいに白煙を上げながらその身を激しく揺さぶっていく。琢磨君はトップのアンソニーと2位のザンガレリに挟まれているのがチラリと見えた。1コーナーではどうなっていくのやろうか? とにかく自分達は重い機材をかかえてピットまで走って戻っていく。
|
|
 |
 |
|
|
|