そして迎えた日曜日。天気予報では寒い寒い一日で雨も降りやすいと言う予報をよそに天気は快晴。しかし、またいつ雨が降ってくるかも知れない。
朝一番でもう一度車検場にマシンをチェックの為に持っていく。
もちろんリストリクターの径は正確にチェックしたのは言うまでも無い。
そして今日はこれと言って事件も無く無事にレース時間まで過ぎていく。
珍しい。こんなに落ち着いた時間があるなんて。

まずはタイヤのプレッシャーをチェックしてマシンにガソリンを入れる。
その後ウォーターヒーターを取り付け、水温をあらかじめ上げておいて、エンジンの暖気をスムーズに出来るようにスイッチを入れた。
そしていよいよ走行30分前。エンジンに火が入る。
マシンをゆっくり暖気する。その間にエンジンの水、オイル、GAS等漏れが無いか? ボルトは緩んでいないか? タイミングベルト周辺は大丈夫か等、その他もろもろチェックして水温が規定値になった所でエンジンストップ。オイルレベルの確認をする。
Everything okay! いよいよこの時がきた。
マシンにカウルを取り付け、ピット前へと向かっていく。
ピット前でマシンを止め、いつものように琢磨君がマシンに乗り込むのを自分はマシンの横で待つ。
琢磨君がゆっくりとマシンに乗り込み自分はシートベルトをしっかりと締める。
ベルトは当然TAKATAの緑色のハーネスや。しっかりとそして確実にベルトをギュッギュッ! と締めステアリングを取り付けミラーの確認をして儀式は終了。
コースオープンとなり、マシンはゆっくりとグリッドに向けて発進して行った。
自分は琢磨君がピットロード出口からコースに出るまでピットでマシンを見送っていた。
マシンがコースイン無事に走り出すのを確認した後、バッテリーを抱えてグリッドに向かっていく。

今回のグリッドは1列目しかし2番手。前方の景色の眺めは良いものの斜め前に一台マシンがいる。
それだけでかなり悔しい思いがふつふつと湧き上がってきた。早くあの場所に戻らねば。
あのポールポジションの場所に一番似合うのは琢磨君しかいない。
やはりJaguarのLottererやと見た目にも役不足やね。やっぱり行くしかないやろ! それは次回のお楽しみや。

グリッド上ではスタート進行がされて行く。自分達はゆっくりとマシンを確認して、タイヤについた小さな石を取り除いたり最後のプレッシャーの確認をしたりしながら時は過ぎて行く。
3分前のボードが提示される。自分とJohn。そしてマシンを残して他のメカニック達はドライバーと握手をしてグリッドから去っていく。
前方では1分前のボードが提示された。
いよいよマシンに火が入りエンジンスタート。自分は琢磨君とがっちり握手してグリッドを後にした。"Good luck" 我々のやるべきことは全て終わった。後は琢磨君にマシンは預けた。
絶対に大丈夫や。今回は行ける! そんな気持ちが心の中に突然湧いてきた。
勝てそうな予感がする。
グリーンフラッグと共に各車フォーメーションへと旅立っていった。マシンはゆっくり、そして左右に激しくウエービングさせながらコースを一周してグリッドに止まった。
一瞬の静寂。その後5秒前の表示とともにマシンの咆哮が高まりグリーン点灯と共にスタート。1コーナーへと向かって飛び出していった。
1コーナーではポールのロットラーがまずクリア。そして琢磨君がそれに続く。
オープニングラップでは1位ロットラー、2位琢磨君の順番で帰ってきた。
しかし、その差はぐっと縮まっている。見た目にも抜くのは時間の問題やね。
そして、3LAP目に突然セーフティーカーが入る。これは前回のSnettertoneの再来か? 琢磨君はまたしても前車に追突するかのごとく接近してその時を待っているように見える。
次の周にセーフティーカーは退き再スタートが切られた。
今回はそのまま1コーナーで抜くことは出来なかったが琢磨君は"いつでも行くぜィ"とばかりにロットラーの背後でプレッシャーをかけつづける。
そのままチャンスを伺いながら淡々とLAPを重ねていく。
そして迎えた8LAP目にホームストレートに姿を現したときにはロットラーを後ろに従えて戻ってきた。
よっしゃー! 思わずガッツポーズで迎える。しかし、まだレースの途中や。
レースは終わるまで何があるか判らない。まだまだ緊張は続く。
今回はお願いやから最後までもってくれ。ホンマ祈るような気持ちで過ごしていた。

その差はどんどん開いていき。約1.5秒引き離した所でビハインドを確認しながらの走行。サインボードの残り時間はそのLAPを重ねるごとに少なくなっていく。
もう、早く終わってくれ。胃が痛くなってきた。思わずサインガードで吐き気をもよおしてしまった。
そしていよいよ残り時間1分を切った。あと1LAPや。頼む。走りきってくれ。
もう見ていられない気持ちや。
そしていよいよ最終コーナーから姿を現した。コントロールラインではチェッカーフラッグが振られている。
待ちに待ったこの瞬間がやっときた。勝った! 勝ったんや! 長かった。とてつもなく長かったような気がする。この瞬間、嬉しいというよりもホッとした気持ちのほうが強かった。本当ホッとした。とりあえずこれで一息つけた。
今までの疲れがどっと出てきて思わずその場にへたり込んでしまった。
とにかく良かった。Johnにかかえられてみんなと握手をして抱き合い、喜びを分かち合った。
やっと、やっと手に入れた貴重な勝利や。

琢磨君がウイニングランを終えて戻ってきた。みんなで拍手で迎えた。
マシンから降りた琢磨君とがっちり抱き合い、勝った事を確認した。
この瞬間。4レースほど遅かったけど何とか逃がさず引き戻した。
本当よかった。これで失いかけた流れはとりあえず逃さず手元に残した。
しかし、まだまだ終わりではない。次にもう1レース残っている。
次を連勝してこそ主導権を握ることが出来るのや!

第1レース決勝
POS NO DRIVER NAT TEAM CAR TIME
1 06 Takuma Sato JPN Carlin Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 20:12.152
2 03 Andre Lotterer GER Jaguar Racing F3 Dallara F301 Mugen-Honda 20:13.556
3 08 Gianmaria Bruni ITA Fortec Renault Dallara F301 Renault Sodemo 20:17.088
4 01 Derek Hayes GBR Manor Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 20:20.632
5 17 Paul Edwards USA Alan Docking Racing Dallara F301 Mugen-Honda 20:21.585
6 02 Jeffrey Jones USA Manor Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 20:23.321
7 04 James Courtney AUS Jaguar Racing F3 Dallara F301 Mugen-Honda 20:24.635
8 05 Anthony Davidson GBR Carlin Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 20:25.896
9 27 Jamie Spence GBR Duma Racing Ltd Dallara F301 Mugen-Honda 20:25.974
10 10 Ryan Dalziel GBR RC Motorsport Dallara F301 Opel Spiess 20:27.928
11 18 Andy Priaulx GBR Alan Docking Racing Dallara F301 Mugen-Honda 20:28.467
12 14 Matt Davies GBR Team Avanti Dallara F301 Opel Spiess 20:30.978
13 21 Mark Taylor GBR Manor Motorsport Dallara F301 Mugen-Honda 20:31.166
14 11 Bruce Jouanny FRA Promatecme UK Dallara F301 Mugen-Honda 20:32.113
15 15 Milos Pavlovic YUG Team Avanti Dallara F301 Opel Spiess 20:32.609
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